五感でカレーを提供するお店
VMDコンサルタントの藤井雅範(ふじいまさのり)です。
カレーを食べるときに使う感覚機能とは?
カレーを食べるときに使う感覚機能。
それは主に味覚と嗅覚だと思います。
芦屋にあるGRASSというお店。
このお店で提供する「思い出の北口カレー」は、味覚嗅覚だけでなく、五感に訴えています。
味覚
独特なんです。
サラサラのルーに、流れこんできた白いドレッシングの酸っぱさが混ざる。
ちょっと複雑で、忘れられない味。
ボクが最初に食べた時は、驚きの味でした!ホントに・・・
嗅覚
カレー屋さんなら香辛料の香りが漂っていて当たり前。
しかしここのカレーのルーが放つ独特の香りは、ボク達を30数年前に連れて行ってくれる、ノスタルジックな香り。
触覚
もともとこのカレーは20数年前まで西宮北口に存在した「サンボア」というお店の「インベロ」という名のメニューを再現したもの。
そのサンボアにもあった木のカウンターに、クッションのある椅子のすわり心地、ステンレスの皿とスプーンの手触りまで、当時の感覚を再現させてくれる。
聴覚
今、カレーを頼むと大抵のお店は陶器の皿に盛られてくると思います。
しかし当時はステンレスの皿が主流。
カレーのみならず、ハンバークやスパゲッテイやトンカツまで、洋食と呼ばれるものは大抵ステンレスのお皿。
GRASSでは当時と同じステンレスのお皿とスプーンでカレーを提供してくれます。
今はあまり耳にすることのない、ステンレスのお皿とスプーンの触れ合う音。
その音まで懐かしく聞こえてきます。
視覚
これもまた独特。
当時の「サンボア」と同じくステンレスのお皿にご飯がこんもり載って、そのご飯が、解読不明なほど薄い玉子焼きの膜で包み込まれている。
その上に、さらさらのルーがかかり、更に薄いカツが載っかている。
右の脇にはキャベツの千切り。
そこにかけられた白いドレッシングが茶色いルーに流れ込んでいる。
見たこともないカレー。
そして更に視覚に訴えるもの。
それが「インベロの思い出」という名の、これをたべたお客さんが書き残したノートです。
たくさんの方が、学生時代に足繁く通った思い出を書き綴っている。
これを読むと、「サンボア」という学生専門のカレー屋さんが、どれほどたくさんの方々に愛されていたのか?が伺えます。
未だに愛されているインベロ
このカレーを提供するお店は「GRASS」と言います。
基本的にはアメリカンなピザを中心としたテックスメックス(メキシコの影響を受けたアメリカ南部の料理)なメニュー構成。
しかし、ここのマスターが昔食べた「サンボア」のカレーの味がどうしても、どうしても忘れられずに、長年の取材と研究を重ねて再現したのです。
閉店後、かなり時間が経っていたのと、当時を知る人間の数も限られていたので大変な苦労があったようです。
そしてその再現、これはお見事!
他に例のない料理なだけに全く独自な味。
過去に食べた人たちの脳裏には深く刻まれているんですね。
やがて口コミからテレビの取材がいくつも入り出します。
当時「サンボア」に実際によく通っていた、松尾貴史さんが取材にいらっしゃいました。
報徳学園時代に甲子園で優勝した、金村義明さんも取材に訪れました。
金村さんは未だに、関西に来る機会があると仕事の合間を縫って食べに来てくださるそうです。
まとめ
「GRASS」というお店は、それほど好立地に立っているわけではありません。
なのでぶらりと新しいお客様がいらっしゃることは通常考えられにくい。
なのに、このカレー目当てに、毎月新規のお客様がいらっしゃる。
「GRASS」のマスターがこのカレーを再現してから結構な時間が経過している今でも、口コミで耳にしたあの時の味を求めて、世界中からお客様が訪れるということ。
マスターの情熱が作り上げたカレー。
それをお客様が五感で味わう。
そこには、儲けようとか、どれだけ売上が取れるとか、そんな計算はなく、ただお客様とともにあの時の感動をふたたび共有しようという、マスターの熱い思いが込められているのです。
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