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まるで芝生を刈り終えるようにディスプレイを仕上げる・・・

村上春樹の午後の最後の芝生

村上春樹さんの短編集に『中国行きのスロウ・ボート』というのがあります。

僕はこの本が結構好きでもう何度も読み返しています。

多分、村上春樹さんの本の装丁を安西水丸さんが手掛けた最初の作品だったかもしれません。

それまでは佐々木マキさんによるイラストが多く、POPでSFチックで無国籍なイメージ。

対して安西水丸さんが手掛けた『中国行きのスロウ・ボート』は、洋梨が描かれた静物画。

初めて手にとった時、やや地味な印象を受けて意外だったことを思い出します。

その後の『村上朝日堂』シリーズや、『夜のくもざる』などの村上&安西ペアの本を読んでいくうちに、すっかり馴染んで感じるようになりましたね〜

 

この『中国行きのスロウ・ボート』という短編集の中では『午後の最後の芝生』という作品が好きです。

芝刈りのアルバイトをしている大学生である主人公“僕”。アルバイトで貯めたお金は、遠くに住むガールフレンドと過ごす僅かな時間のため使うことにしている。ある日ガールフレンドと別れることになり、アルバイトを続ける理由もなくなった僕はアルバイトを辞めることにし、最後の芝刈りに出かける。その依頼先の家で女主人から妙な依頼を受けることになる・・・

そんなお話です。

 

アメリカ西海岸での出来事のような情景描写(実際の設定は神奈川県のよみうりランド近く)のムードが良いんです。

そして登場する女主人は、まるで柳ジョージの『青い瞳のステラ 1962年夏…』みたい(笑)↓

 

でも共感できる点は他にもある。

それは主人公である大学生の芝生の刈り方です。

とてもきちんと刈り上げるのです。

これは依頼主のリクエストでも会社の方針でもなく、主人公の性格。

芝生を刈るのが好きで、きちんと仕上げなければ気がすまないという性分。

とてもわかる気がします。

少しだけお気に入りの文章を引用しますね。

僕はFENのロックンロールを聴きながら芝生を丁寧に刈り揃えた。なん度もくまでで刈った芝を払い、よく床屋がやるように色んな角度から刈り残しがないか点検した。一時半までに三分の二が終わった。汗が何度も目に入り、そのたびに庭の水道で顔を洗った。何度かペニスが勃起し、そしておさまった。芝を刈りながら勃起するなんてなんだか馬鹿げている。

 

僕もディスプレイに関して、以前は随分と細かかった様に思います。

きちんと仕上げないと気がすまなかったんです。

そこまでこだわらなくても誰も気が付かないやろ?見え方や売上に影響ないやろ?って部分までやってた。

いまは随分と鷹揚に構えていられる様になりましたが(笑)

今年の『午後の最後の芝生』

昨日の午後は庭の芝を刈りました。

このタイミングで刈っておけばもう年内は刈らなくても良い。

今年の『午後の最後の芝生』です。

次は少し暖かくなりだした頃でも大丈夫かもしれない。

 

まず長手に向かって芝刈り機を動かす。

一通り終わったら今度は直角、短手に動かす。

橋の部分は手で刈り込む。

最後にいろんな角度から刈り残しがないか確認する。

まるで床屋が客の髪型を確認する様に・・・

自分なりに納得すると随分とスッキリした気分になります。

なんかディスプレイの仕事と似ていますね〜

 

村上春樹さんの短編集『中国行きのスロウ・ボート』

『午後の最後の芝生』はもちろん、収められている作品は名作揃いで好きです。

興味のある人は読んでみてくださいね!

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