文学とVMD |『檸檬』から学ぶディスプレイ・デザインのヒントその1
こんにちは!
VMDコンサルタントの藤井雅範です。
レモンって漢字で書いたことありますか?
バルコニーに鉢植えのレモンを育てています。
形はレモン、でもまだ色づいてはいません。
ただ雨に濡れて雫を垂らしている。
先日『檸檬堂』という商品名のレモンサワーを飲みました。
パッケージデザインが良かったから買ってみたんです。
ちょっとレトロなデザイン。
商品名は漢字で『檸檬堂』ってかかれています。
漢字で書くとレモンのイメージも変わりますよね〜
なんだか普通のレモンサワーより旨味が増したように感じるから不思議です。
漢字で書くとレモンのイメージも変わりますよね〜
梶井基次郎の『檸檬』
『檸檬』という字を見ると梶井基次郎の短編小説を思い出します。
京都に住む学生が憂鬱な気持ちを抱えたまま街を歩く
果物屋で買った檸檬を手にしただけで憂鬱な気持ちが消えていく
ふと目についた果物屋の描写
そこで買った檸檬の描写
丸善で自ら積み上げたディスプレイの描写
視覚や触覚や嗅覚や色のコントラストや陳列に関する記述が豊かな作品なんです。
見やすい陳列の基本
たとえばこんな記述が
ここでちょっとその果物屋を紹介したいのだが、その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった。そこは決して立派な店ではなかったのだが、果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられた。果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって、その台というのも古びた黒い漆塗りの板だったように思える。何か華やかな美しい音楽の快速調の流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面――的なものを差しつけられて、あんな色彩やあんなヴォリウムに凝り固まったというふうに果物は並んでいる。青物もやはり奥へゆけばゆくほど堆高く積まれている。
勾配の急な台、奥へゆけばゆくほど堆く積まれている。
これって見やすい陳列の基本ですよね。
更にそれが『何か華やかな美しい音楽の快速調の流れ』や
『見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面――的なもの』といったメタファーで表現されている。
流れ落ちそうな急な勾配、なのに石のようにとどまっている、という意味なのかもしれませんね。
たしかにそんな陳列は目を引きます。
「どうなってるんだろうか?」
「なんで落ちないんだろうか?」
って気になりますからね〜
更には『黒い漆塗りの板』の上に黄色い檸檬が陳列されているんです。
この情景、思い浮かべるだけでコントラストの強さが伝わってくる。
檸檬の黄色がより鮮やかに映えるはずです。
この小説からは、そんなことも学べるのです。
また続きを書いてみますね!
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