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リーマン・ショックが来ようが周辺の店舗が低価格化しようが洋服が好きな人は今も変わらず洋服を買う!

VMDコンサルタントの藤井雅範(ふじいまさのり)です。

6月28日の新聞記事に『ワールド希望退職者500人募集』という記事が掲載されていました。

僕が長年在籍していたアパレルメーカーのワールドです。

500人というのは社員の3割に相当する模様。

対象者は40歳以上に限定するということで、販売や生産を担う子会社では実施しないらしい・・・

先月発表された『ワールド直営店舗400〜500店舗閉鎖』につづく、ショッキングなニュースです。

ワールド神戸本社

ワールド神戸本社

 

ワールドの躍進

今から20年近く前の話。

ワールドはそれまでの卸業態中心からSPA業態中心へと大きく舵を取り始めました。

まずは百貨店やファッションビルを中心にヤング〜キャリア〜ミセス〜メンズまで、次々とSPAブランドを立ち上げ、ロジカルなシステムで効率の良い業務推進を行い始めました。

次にやってきたのが大型商業施設の台頭。

ここでもあらゆるカテゴリーに手を打ちます。

ヤング〜ミセスはもちろん、ファミリー業態や大型ストア、ライフスタイル業態まで次々とブランドを開発。

見事に大型商業施設の出店ラッシュの波に乗ったわけです。

 

当時ボクは、ショッピングセンター、ファッションビル、駅ビルに出店するほぼ全ての業態、ブランドを統括する事業部にいました。

そのなかで、インテリア・VMD、販促、プレスといった業務の責任者として取りまとめを行っていたのです。

ピーク時はボクが担当している事業部だけで、年間100店舗近い出店がありました。

ショッピングセンターの開発に対応して新しいブランドや屋号も次々に生み出される。

おそらく30を超えるブランドを担当していたと思います。

毎日の仕事は、出店や新ブランド開発に関するすることが多かった。

それもたくさんの数を並行して行うのです。

全く新しいブランドの図面会議と、販促物の開発会議が1日に3本ずつ、なんてこともありました。

こうなるとほぼ流れ作業。

外部デザイナーからの提案をチェックして次々とこなしていく、という毎日。

外からの刺激も多いし、業務量はとても多い、そして業績は拡大する。

だからそれなりの充足感はありました。

だけど・・・

 

最先端のデザインのお店に、売れ筋のキーワードを持った商品を適量に投入すれば、売り上げは取れる。

この手法で業態を置き換えてどんどん横展開し、効率化を図る。

売れるモノを早くたくさん作ることが出来ればそれで良い。

そんな思考の渦に、いつしかどっぷり浸かっていたようです。

そこには直接個人のお客様と向き合うような感覚は必要無い・・・

うん?でもこれで良いのだろうか?

ボクたちの作っているお店、器は違えども中身はほとんど一緒じゃないの?

ファッションってこれで伝わるの?

お客様はお店やブランドのファンになってくれているの???

そんな疑問が膨らみました。

やがてボクはワールドを退職。

 

実はリテールサポートのプロ集団だった!

話は更にさかのぼります。

僕が入社した当時、今から30年ほど前の話。

ワールドは卸事業中心のアパレルメーカーでした。

専門店様に展示会に来てもらい受注していただきそれをお店に納品する、というのが直接のビジネスです。

 

実はワールドというのはとっても稀有な会社なんです。

30年以上前からVMDの専門職チームがしっかりとした組織としてあったのです。

専門店に商品を卸すメーカーという立場であるにもかかわらず、その専門職チームは、あくまで専門店さんのリテールサポートを行う部隊に徹していた、ということ。

これは素晴らしいことです。

お店のお手伝いをするから自社の商品を受注してください、というレベルではなく、あくまで専門店さんの店頭の売り上げが活性化するために販促提案を行うプロ集団だったということ。

だから、ボクたちも商品の良さを表現するプロとしての修行を積み重ねました。

幸い周りの先輩が、厳しくもとても高い技術を持った方たちだったので、その技術の習得を夢中になってやっていたものです。

特に、ニットが得意なブランドが多かったのでニットの表現を磨いたりしましたね・・・

イメージできますか?

ニットの素材感が綺麗に表現できるからって、わざわざドイツまで行って大量にウレタン製の可動(自在に動きがつけられる)マネキンを仕入れてくるんですよ。

そしてそれを駆使して一つのショーウインドウを作り上げる、そんな技術を一つの体系化されたものにまで昇華させていったのです。

だから専門職チームのメンバーはファッションコーディネート能力・空間構成能力のみならず、造形能力まで鍛えられました。

確かにそれに着せるとニットが生き生きと表情豊かに見えるんです。

こんな風に一点の商品の良さを圧倒的に引き出す技術を磨きました。

 

見せて伝える、ファッションを表現する部分を我々が受け持ち、接客や応対といった関係性作りは専門店さんが行うという協働作業。

結果として、専門店さんの店頭はどこよりも美しく魅力的に演出され、顧客に支持され、地域1番店であり続けたのです。

そして他社の商品であろうと、その専門店さんの売り上げになるのなら当たり前のように表現しました。

ボク達は店頭のヴィジュアル表現のみならず、ファッションショーや店頭イヴェントの企画・実施の支援も行っていたました。

もちろんそこでも他社の商品のスタイリング組みまで任されます。

このように、取引先専門店さんの売り上げアップのお手伝いを専門家として行っていたわけです。

まず専門店さんの売り上げが上がり、次の展示会で受注が増えれば我々の利益にもなるのですから。

だからあくまで、『専門店さんの店頭売り上げ=自分たちの売り上げ』と思っていたし、展示会で無理な受注をさせようというような意図は全くない。

今思えば高い次元でビジネスの本質を理解したスタンスでお仕事をすることができていましたね。

これは貴重な経験でした。

ファッションビジネスの本質に目を向けよう!

リーマンショックが来ようが、周辺の店舗が低価格化しようが、お洋服が好きな人は今も変わらずお洋服を買っています。

そんなお客様としっかり関係性を築いていくことでお洋服はこれからも売れ続けます。

ファッションというものを中心に提供する側とお客様とのコミュニティを築いていく。

そこではお客様が笑顔になる。

これからのファッションビジネスで大切なものというのは、そんな『関係性』なんだと思います。

 

ファッションは、お米やパンのように生きていく上で必ず必要なものではありません。

暑さ寒さを凌ぐ以外のファッションなんて、無くても生きていけるのです。

『売れればターゲットは誰でも良い』ではダメ!

『こんなファッションを提案したい、だからこんなお店を作る』

そしてそんなファッションが大好きな人がお客様と関係性を築いていく。

お客様はそのお店やその人のファンとなり支えてくださるようになる。

『あの店で買いたい、あなたから買いたい』そう思ってくださるように・・・

もう一度、お洋服が大好きな人たちの手でブランドやお店を作り上げ、お洋服が大好きなお客様にその価値を伝えていけるようにできる。

それがファッションビジネスの本質だと思います。

 

今のワールドの社員の中にも、ファッションビジネスの本質を理解されている志の高い方たちがいます。

そんな方々の活躍で、再びワールドのお店がお客様に圧倒的に支持されるお店になっていくことを信じています。

本当に素晴らしい歴史を歩んできた企業だから。

 

・・・・・そういうことです。

 

 

 

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  1. 松原ゆうこ

    藤井様
    初めて、ブログ読ませていただきました!
    全く、同感です。。!
    ファッションが好きで、販売歴20年近くになります。
    休日は、ワールドさんのショップも家族とよく見に行きます。
    よっぽど気に入ったら購入しますが、正直似たりよったり、ショップのファンにはなれません。
    お店の数ばかりあって、魅力がなく、ただ時間を過ごすような販売員さんを見ると、悲しくなりますし、利益は出ているのか心配になってきます。
    一般の人たちも、同意見なはず。
    藤井さんのような考えの方もいるのがわかり、ホッとしますが、この販売形態、なんとかならないものでしょうか!
    私が働くショップは、1日の売上客数は10名以下がほとんどですが、お客様一人ひとりと対話している実感はあり、大切に思って接客しています。
    またブログ、楽しみに拝見させていただきますね!

    • 藤井 雅範

      松原さん、暖かくもわかりやすいコメントありがとうございます!
      ワールドの変遷を見ていてつくづく思います。
      これからが本当にあるべき姿に向かっていくんだと。
      昔と比べるとお店の数はとても増えました。
      でも本当に便利になったの???
      同じようなお店がたくさんあっても本当に欲しいものやサービスはなかなか見つかりません。
      お洋服が好きな人が自分の好きな服を作って、お洋服が好きな人が自分の好きな服を売る。
      だからお客様が本当に笑顔になれるコーディネートや接客ができる。
      価値が高く伝わるんですよね。

      今はここができていないお店が多い!
      お客様の顔を、売り上げや数字に置き換えてみていては誰も幸せにはなれません!

      当たり前で基本的なことを素直に愚直に行うことがこれから大切だと思うんです。
      これからは、そんなファッションビジネスの本質に戻って行くと思います。
      きっと・・・

  2. 山森希世子

    記事拝読致しました。ありがとうございます。
    同世代でファッションの専門学校に勤めております。職歴は、㈱ライカ、パタンナーの後
    帽子デザイナーで、現在に至ります。
    ブログを継続的に読ませて頂き、今の時代のファッション教育に必要な要素を模索させて頂ければ幸いです。

    • 藤井 雅範

      山森さん、コメントありがとうございます!
      次世代のファッション業界を担う学生たちに、我々が良い影響を与えられれば良いですよね!

  3. 益住まっすん俊行

    藤井さんこんにちは!ワールドの子会社からスタートした株式会社ビッグステップのマスズミと申します。ずっとそばで20年お手伝いしてきたので現状には少しイライラしており、藤井さんに同感、素晴らしい提言です。一点だけ比喩で「お米やパンとは…」と言う部分は違和感感じました。お客様との信頼関係築きながら誠心誠意働く米屋やパン屋の友人が居るからです。例えとしてわかりやすくしたかったのでしょうね。これからもコラム楽しみにしています。

    • 藤井 雅範

      益住さん、こんばんは。
      懐かしいです。昼夜を問わず会社を守っている姿、今でも瞼に浮かびますよ!
      『お米やパンとは・・』という表現、確かに違和感を感じられたかもしれませんね。
      【『お米やパン』というのは生活必需品、なくては生きていけないもの。
      『ファッション』というのは装飾要素が高いもの、特になくても生きていけるもの。
      だから売り方、価値を伝える手法が違う。】
      こんなことを表現したかったのです。
      もし誤解を与えていたのなら、それは僕の表現力の無さです。
      ごめんなさい。

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