彼女がこの店で買ってしまった理由|その②
昨日、“明確なニーズがないお客様の購買行動”は2つに分けられる、という話を書きました。
この2つというのは
・自分の奥底にもともとある潜在的なニーズに気づいて買う場合、と
・全く今まではなかったニーズが突然生まれる場合、
の2つです。
今日は、全く今まではなかったニーズが突然生まれる場合、についての例を軽い読み物風に書いてみますね。
学生のころからバレーボールをしていた私は、
人から「活発なイメージだね」と言われることが多い。
社会に出てからは、男の人に負けちゃいけないってさらにボーイッシュに振る舞っているし。
最近知りあった男性がいて、時々連絡をくれる様になった。
なんだか気になる存在。
今度初めて二人で出かける約束をした。でも・・・
元来私はファッションに関しては臆病で、冒険をしていない。
ボトムはいつもパンツルック。
そんな私が仕事帰りに通りかかった、あるお店。
ふと気になったので、足を留めてみる。
みると、今までは絶対利用しそうにないフェミニンでゴージャスなテイストのブティック。
黒くて艶のあるマネキンが着ているのは、女らしさがあり、ちょっとセクシーなスタイリング。
インテリアも、女性らしいゴージャスさのある部屋、のような演出している。
わたしが今まで着たことのないお洋服ばかりなのに、何故か惹かれる。
そこで、なんとなく店に足を踏み入れてみた。
すると、そのお店のイメージにぴったりなムードのスタッフが応対してくれた。
お洋服の話ではなく、わたし自身のライフスタイルについて質問してくれるので、話しやすい。
つい、気になる男性のことも話ししてみた。
するとこんな質問を投げかけられた。
「いつもパンツルックなんですか?」
「はい。パンツしか穿いたことがないんです・・・」
するとしばらく彼女は離れたコーナーに行って、一点のワンピースをもってきた。
「よかったらこれ試着してもらえませんか?お客様がこのワンピースを見ている姿を見てみたいんです」
「えっ・・・」
それは私が今まで絶対に手にしたことがない、ショート丈の黄色のワンピースだった。
フィッティングルームに案内される。
たっぷりとした分量の深いパープルのカーテンがタッセルでまとめられている。
中で黄色のワンピースに着替え、フィッティングルームから出た。
前室の繊細なシャンデリアの下で鏡に写った自分の姿を見た。
下半身がまるで違う。いつものパンツルックから開放された軽やかさを実感。
「あっ、こんな自分は初めて見た。なんだか似合っているような気が・・・」
先程のゴージャスなスタッフが、パンプスとイヤリングをもってきてくれた。
つけてみると、もう別人。でも似合ってしまっている自分に気づく。
「髪はまとめずにふんわり落としたほうが良いかもしれません。メイクは少しコントラストを・・・」
「パンプスは、今合わせていただいている商品より低い方が良いかもしれません。よかったら1Fのシューズ専門店を紹介しますよ」
彼女はそうアドバイスしてくれた。
自分の店で扱っていない商品まで教えてくれる。
フィッティングルームの前室のスペースは細長い廊下状になっている。
「背筋を伸ばして、腰から脚を踏み出すように歩いてみてください」
そんなアドバイスを受けて、突き当りの壁まで少し歩いてみた。
突き当りのミラーに歩く自分の姿が映る。
今までの自分とは確実に違う、新しい自分が見えた。
いや、今までは知らず知らずのうちに蓋をしていた見えなかった部分が、ようやく開放された様な爽やかな気分。「男の人に負けないように」って、いつの間にか肩に力が入って居たのが心地よく緩んでいく感覚。
私にはこんな部分もあったんだと、このお店は気づかせてくれた。
それはスタッフとの会話と、お店の空間の魅力のせいかもしれない・・・
いかがでしたか?
こうして、今までは全くニーズなんて感じなかった“黄色のワンピース”に、突然ウォンツ生まれたのです。
そしてそれは“私”のインサイトを、推し量りまた刺激してくれた接客と空間がもたらしてくれたもの、なのです。
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