なんてことないけど、お気に入り・・・
評判の悪い親戚?
芦屋や神戸ではめったに雪は降らない。
だからたまに降る雪は“ロマンティックな存在”として、歓迎されることが多い。
でも、札幌の街ではそうではないようです。
村上春樹さんは、札幌における雪の存在をこんな風に表現している。
『どちらかと言うと、それは評判の悪い親戚みたいに見える・・・』
うまい表現だなぁ〜、と思いました。
“評判の悪い親戚”って、なんかわかる気がする。
血のつながりがあって、切っても切り離せない存在。
馴染みや多少の親しみはある。
けれども、法事や宴席で顔を合わすと一方的に話しまくられて、ところどころ皮肉や説教や悪口が混じりだして・・・
そんな親戚ってたしかに居たような気がする。
札幌という街は大都会だ。
そして冬になればたくさんの雪が降る街でもある。
雪まつりには国内外から沢山の人が訪れる。
雪とは切っても切れない関係。
そして、大都会であるがゆえに、雪をコントロールすることも避けて通れない。
そこには多大な苦労があり、毎年の悩みの種でもあることでしょう。
でも雪があるからこそ札幌だろうし、ラーメンもうまくなる?(笑)
そんな気がします。
彼女の町と彼女の緬羊
冒頭の表現は短編集「カンガルー日和」に収められています。
その中の「彼女の町と彼女の緬羊」という作品。
札幌に来た主人公が、ふと心をかよわせる瞬間を描いたお話しです。
しかもその相手は、宿泊先のホテルの部屋のテレビの中に映しだされる、北海道の小さな町役場の広報課の若い女性。
緊張した面持ちの彼女がテレビカメラに向かって、自分たちの町の農業や酪農に関して語る。
主人公はホテルのベッドに寝転んで、ビールを飲みながらそれを眺めている。
本当にただそれだけのお話しです。
ブラウン管を通して、主人公は彼女にシンパシーを感じる。
そして彼女の町とその町の羊達に思いを馳せる。
ただそれだけのお話し。
理由はよくわからないけれども、ボクはこのお話しが好きです。
特別に事件が起こるわけではない。
ちょっとした“感情の揺れ”みたいなものを描いているだけ。
でもとても魅力的な文章なんです。
なんてこと無いけど、お気に入り。
・・・・・そういうことです。
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