展示会のディスプレイと老祥記の豚まん|味覚で蘇る記憶
こんにちは!
藤井雅範です。
ワールドでの修行時代
今から35年前、ボクがちょうど大手アパレルメーカーワールドに入社した時のお話。
当時ボクはコルディアというブランドを担当するSC(セールスコーディネーター)と呼ばれる専門職として勤務していました。
SCの仕事のメインは、取引先専門店様の店頭ヴィジュアル、販売促進をサポートし売上を維持、向上させること。
サブの仕事は担当ブランドの展示会場の設計とディスプレイのプラン~実施です。
当時の『コルディア』は、売上世界一(単一ブランドベース)といわれていたブランドでした。
年に6回展示会があり、毎回SCの専門職スタッフだけで30名近くの人が携わっていたのです。
そして毎回夜中まで真剣勝負でディスプレイしていた。
商品が変われば見せ方も変わる!
展示会場のディスプレイプランは毎回変わります。
商品が毎回変わるのは当然ですが、商品の表現方法までもが毎回のように変わるのです。
あるときはマネキン、あるときはトルソー、あるときはハンガーに紙でパディングして、あるときはモルトフィギュール(ドイツ製の、針金が骨として入っているスポンジ製の人形)、あるときはステージに広げて、あるときは天井からぶら下げて、あるときはパイプに引っ掛けて、あるときは直立した筒を体に見立てて・・・・・
シルエット、素材、カラー・・・商品の変化に応じて見せ方・表現も当然のように変化するのです。
その新しいアイディアに触れる事を、ボク達専門職仲間が毎回楽しみに待っているような展示会だったのです!
だからその展示会は、新しい表現を見ていただく場でもある。
当時のスーパーバイザー(その現場の設計・ディスプレイ手法・表現法を統括する企画~実施責任者)からどんな指示が飛んでくるのか?
大きな展示会場内で、みんな真剣勝負です。
新しい表現を開発しよう!
人のやらないことをやろう!今までやっていない見せ方をやろう!誰よりも新しい表現を開発しよう!
そんな気概を体中から発散させていた仲間たちが集っていました。
基本的なテクニックがうまいのは当たり前!なんです。
でもボクなんかはその基本を身につけることまでも大変な時間がかかってしまいましたが・・・(笑)
それだけ素晴らしい技術と向上心を持った仲間に恵まれていた、ということかもしれません。
新人にとっての大きな仕事
新人はディスプレイはさせてもらえません。
掃除と先輩のサポート、あるいは簡単な施工や備品の調達です。
これも早く完璧に出来て当たり前。
その上で先輩方が新たな表現に挑む。
そんな真剣勝負の場で新人が活躍できるのが「夜食の調達」
ボクたちも新人の頃、しっかりと経験しました!
1番人気は神戸は元町の中華街、南京町広場前にある『老祥記』の“豚まん”でした。
普通の豚まんより、ふた回りほど小さいサイズ。
中には旨味のギッシリ詰まったミンチ、滴る肉汁。
一般的な“豚まん”とは一線を画す独自の味わいでした。
人気店なのでお店はいつも行列です。
ボクたち新人は先輩のためにその行列に挑むわけです。
ただし、買う量がちょっと違う。
そのSCの先輩方を始め、展示会準備に携わる商品企画チームも含め30人~40人分の買い出しです。
ひとつの大きさが小さいので、一人5つは食べる。
買い上げ個数は200個近くになるわけです。
なんで200個も買うねん!!!
普通に行列に並んでいる人たちは、もちろんそんなに買いません。
せいぜい10個くらい。
ボクたちが買いに行くとしばしば起こる現象、それは『売り切れ』
そんなときに後ろに行列を作っている方々は、並んだ甲斐もなく“豚まん”を入手できずに立ち去るわけです。
ボクたちに冷たい視線を浴びせて。
『なんで200個も買うねん!!!このどアホ!』という心のこえが聞こえてきます。
そのようにして入手した豚まんを携えて意気揚々と会社に帰ります。
まるで戦利品を持ち帰る兵士のように。
そして展示会場内で一息入れる先輩方の笑顔を見て、ボクたちもホッとしたものです。
いたずら好きの先輩方がたくさんいたので、休憩時間も盛り上がります。
豚肉の代わりに、“練からし”の詰まった豚まんを巡ってロシアンルーレットをしたり。
人間をパッキンに梱包して、穴からタバコの煙やガラスクリーナーを注入したり、サンドバッグにしたり、挙げ句は佐川さんに出荷しようとしたり・・・たのしい休憩時間でした(笑)
一流の技術を磨く人は休憩時間も徹底的に遊んでたなぁ・・・
先日、元町でのVMDセミナーの帰りに『老祥記』の豚まんをいただいて、そんな懐かしい日々を思い出しました。
もう30年以上前のお話。
そう、味覚や嗅覚は記憶に残りやすいのです・・・
この記事へのコメントはありません。