観客は試合を見に来ているのではない!|プロとしての所作
感動の王座返り咲き
実に5年5ヶ月ぶりの王座返り咲き。
日本人としての最年長世界王座奪取。
世界で三番目の高齢三階級制覇(35歳)。
昨日、長谷川穂積選手が臨んだ世界タイトルマッチへの挑戦試合を会場で観戦することが出来ました。
試合内容、結果ともに感動を与えてくれるものとなりましたねぇ。
アンディ・ガルシアVS長谷川穂積のノンタイトル戦
ボクが長谷川選手の試合を観戦するのは二度目。
前回は昨年の5月、オラシオ・ガルシアとの一戦。
その一年前、4年ぶりの世界王座奪取に失敗してからの再起第一戦目です。
そのときに強く感じたこと
それは試合以外の面にありました。
入場時の落ち着き、礼儀正しさ、試合後の相手選手へのねぎらい、ファンへの感謝、そして退場。
それまでもプロボクシングの試合を見た経験はありますが、他の選手と比べて圧倒的に格が違った印象でした。
試合中のフェアプレイはもちろんのこと、それ以外の気配り、思いやりという所作が見事だったということ。
それから1年と4ヶ月、みたび世界へ挑戦するチャンスが巡ってきました。
ウーゴ・ルイスVS長谷川穂積のWBC世界バンタム級タイトルマッチ
圧倒的な声援に包まれながらの入場。
堂々と、そして落ち着いた動き。
挑戦者である長谷川は、先に入場しウォーミングアップしながらチャンピオンウーゴ・ルイスの入場を待つ。
試合中のハプニング。
両者偶然のバッティング(頭がぶつかること)により長谷川が負傷。
本来ならここで、ウーゴ・ルイス側に減点が行われる(WBCルール)
それを主審がウーゴ・ルイスのヒッティング(パンチが当たったこと)による負傷と判定。
減点されないまま再開されようとしました。
ビデオでは明らかにバッティングの場面が映し出されており会場は騒然。
結局、判定は翻されウーゴ・ルイスに減点がなされました。
一旦は誤判定をうけた身でありながら、判定ミスを犯した主審を気遣うかのような長谷川の素振りが見られました。
身長差(約9センチウーゴ・ルイスが長身)もあり、長谷川の攻撃に対応しようとウーゴ・ルイスも腰を沈める。
そのたびに何度もバッティングが起こるという、緊迫した闘い方。
しかし長谷川は、レフェリーによるブレイク後の再開時には必ず軽くグラブを差し出します。
まるで相手とシェイクハンドするみたいに。
感動のTKO!
5年5ヶ月ぶりの王座返り咲き!
三階級制覇達成!
そんな偉業を成し遂げた後に、長谷川がまず口にしたのは、敗者ウーゴ・ルイスに対する感謝と尊敬の言葉でした。
そして、この日はこのあとメインエヴェントに山中慎介の防衛戦が控えています。
『山中選手が勝利してやっとひとつの勝利、皆さんこの後の試合の応援もよろしくお願いします』という、次の試合、会場運営への配慮へのぬかりもありません。
自身の喜びで一杯でアタリマエだろうに・・・
ボクはこの日、深い感動を感じました。
それは3分12ラウンドの試合内容はもちろんあります。
しかし、入場から退場までの長谷川の立ち居振る舞い、所作の全てに感動をしたのだと思います。
“お客様は試合を見に来ているんじゃない。
感動を味わいたいのだ。
そのためには試合の前後、生き方も含めてお客さんに感じてもらうこと。”
本物のプロの選手というのは、そういったことを身にしみて感じているのかもしれませんね。
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