『電リク』イヴェントで、音楽の価値を再発見する・・・
VMDコンサルタントの藤井雅範です。
『電リク』ってご存知ですか?
ラジオ局に電話を掛けて、自分が聴きたい曲をリクエストする。
上手くいけばその曲が掛けてもらえたり、その曲に関するエピソードを紹介してもらえたりするシステムのこと。
『電話リクエスト』を略して『電リク』といっていました。
葉書によるリクエスト、電話によるリクエスト、FAXによるリクエスト、Eメールによるリクエストと、ラジオ局に聴きたい曲をリクエストする、その形態は様々に変化していますね。
『電リク』のはじまり
そもそもの『電リク』のはじまりは、1952年まで遡ります。
12月24日のクリスマスイブ。
神戸市の『ラジオ神戸』(現在のラジオ関西)がクリスマス特番として電話でリクエストを受け付けたのが始まりだそうです。
村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の中でも、このラジオ関西と思われる局の番組『ポップス・テレフォン・リクエスト』というモノが登場する。
調子の良いDJが主人公である“僕”に電話をかけて、“君へのリクエスト曲のプレゼント”を紹介する。
中学の修学旅行の時に、落としたコンタクトレンズを拾って上げた御礼に、その女の子からレコードを借りる。
しかし、レコードをなくしてしまって返せていないままになっていた・・・という様なくだりです。
その時に借りたレコードが“ビーチボーイズのカリフォルニアガールズ”・・・・・
ラジオ番組を舞台に“リクエスト曲のプレゼント”という行為が、とっても価値が合った時代。
今とはニュアンス、空気感が違う気がしますね。
まるでラジオの公開番組?
今日は芦屋のルナ・ホールという会場で行なわれたイヴェントに参加しました。
“芦屋文学サロン・電リクふたたび”というタイトルのイヴェント。
今もラジオ関西で番組を持つDJ(パーソナリティ、とも呼ばれています)三浦紘朗さん、増井孝子さん、のお二人がラジオ番組さながらにリクエスト曲を掛けて、メッセージやエピソードを読み上げる。
また、“風の歌を聴け”をはじめとした阪神間を舞台にした小説を増井孝子さんが朗読するコーナーも。
まるでラジオの公開番組のようなイヴェントでした。
その会場内でもリクエストを受け付けてもらえます。
流す曲は全てレコード。
古ーいポップス中心です。
ミシッ、ボソッというレコード針が拾うノイズ、コレも味が合って良いですね。
“スクラッチ・ノイズ”と呼ぶそうですよ。
リクエスト曲で構成されているので、次にどんなジャンルの曲が掛けられるのか?も予想がつかない。
意外な曲がかかる発見や喜びみたいなものも、ラジオ番組の魅力ですよね。
音楽を楽しむ、その価値観の変化
昔はひとつの曲、一枚のレコードにとても価値があった時代でした。
一枚のシングルレコードに500円から600円を支払う。
アルバムとなれば2500円程度。
当時としてはとっても高価。
だから何度も何度も繰り返し同じ曲をレコードで聞きました。
ラジオにリクエストするという行為、その曲が掛けてもらえるという喜びにも高い価値があった。
聴きたい曲を聞く為にとっても労力を要した時代だったんですね。
今は、音源・音質にこだわらなければ、ほぼ無料でダウンロードが可能な時代。
ふと、聴きたくなった曲を探すのも容易になった。
ひとつの曲を繰り返し味わうという行為も少なくなったように思います。
一曲の寿命も短く、音楽の種類・ジャンルやカテゴリーはどんどん広がっている。
そして、何処へでも容易に曲が持ち歩けるようになりましたね。
音楽を楽しむ行為やその価値感が大きく変化してきています。
レコードで音楽を味わう・・・
自分のリクエスト曲が採用されたり、他人のメッセージやエピソードを聞きながら改めて曲を聞き込んだりすること。
しかも音楽ホールのなかでレコードで味わう。
今日はそんな行為の価値を改めて感じることが出来ました。
目を閉じてレコードの音を聞いていると、色んな風景が浮かんだりイマジネーションが勝手に広がります。
同じ場で沢山の人が同じ曲を聞いているけれども、きっとみんながそれぞれ自分の思い思いのイメージでその曲を味わっているんだろうな?
・・・・・そういうことです。
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