片岡義男のエッセイから学ぶ、マツダ躍進のもう一つの理由。その1
VMDコンサルタントの藤井雅範(ふじいまさのり)です。
片岡義男さんの本
高校時代から大学時代にかけて、よく読んでいたのは片岡義男さんの本です。
情景描写を徹底的に行い、書き手の主観は描かない。
「その時に吹いた風は、彼女の長く複雑にカールした髪を揺らし、ふんわりとしたスカートをはためかせた・・・」
なんていう感じです。
まっ、カッコ良いんですよ!
ハードボイルドな表現(探偵さんは出てこないけれど)。
大抵は角川文庫で、表紙に使われている写真がまた良い。
なんか持っているだけで、気分が良くなる感じです。
そんな片岡義男さんの本に『コーヒーもう一杯』という作品があります。
エッセイを中心とした短編集。
内容は、オートバイやサーフィンやアメリカやハワイのカルチャーのお話しが多い。
片岡さんはそういった内容にとっても造詣が深いのです。
『コーヒーもう一杯』という本の中で、けっこう好きなのが『マスタングという名の自動車』という短いエッセイ。
『マスタングという名の自動車』
フォードのマスタングといえば、数年前に復活して今も人気を保っているアメリカのスポーティーな車。
デビューは1964年。
マッスルカーやポニーカーやスペシャリティーカーといった呼ばれ方をした、スポーティーなイメージを持った車の代表格ですね。
そのエッセイの中で片岡義男さんはマスタングについてこう書いています。
「60年から70年までの十年間に売れる自動車の総台数の半分以上が、18歳から34歳くらいまでの人たちによって占められる、といったことがわかったりする。この若いエイジ・ブラケットに狙ねらいを合わせた新しい自動車をつくり出さないことには、競争に勝てない。彼らがどんな自動車を好んでいるか、具体的なリサーチをする。
ー中略ー
1964年まで、ビッグ・スリーが中心になり、ああでもない、こうでもないという感じで、スポーティでパーソナルでありながらけっしてマニア的な本格スポーツカーではない、大衆廉価版のコンパクト・カーを、試行錯誤的にたくさん出していく。
ー中略ー
二十年ちかい時代の流れのなかでマスタングが最終的に勝利をおさめたのだが、オプションの多さを別にすると、唯一のきめ手は、結局、ボディのかたちが持っているイメージの喚起力という、実体のあるようなないような、不思議なものであった。
」
マスタングという車の成功は、正確なマーケティング・リサーチによってマーケットをあぶり出していくプロセスを経て生まれたものらしい。
当時は、アメリカといえどもまだそんなにモノが十分に豊かではない時代。
これから人口が増えだす若者が欲しいと思われる車を、自動車メーカーが提供できていなかったといえます。
マーケティングリサーチの結果生まれた車が、マスタング。
その実態は元々あった大衆車をベースに、スポーティーなデザインのボディを乗っけて、若者に受けるようにフロアのマニュアルシフト(当時はまだハンドル脇のコラムシフトでギア・チェンジすることが一般的)仕様にしただけの車、と言っても過言ではないらしい・・・
それなのにそんなイメージの喚起力が、若者たちの圧倒的な支持を受け、50年以上経た今も同じテイストで存在している稀有な車となった、ということです。
つまりは、技術や新開発というよりはマーケティングの成功というものが土台のようです。
さて、そのマスタングとマツダの共通点とは何でしょう?
長くなったのでこの続きはまた次回書いてみますね!
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