商品のための器から、器から生まれた商品へ・・・
VMDコンサルタントの藤井雅範(ふじいまさのり)です。
録画しておいたテレビ番組をなかなか見る時間が作れず、先日放送から1ヶ月ほど経ってからようやく見ることができました。
その番組は『美の壺』というタイトルです。
アンティークのお菓子の缶を特集した回の放送を録画していました。
以前ボクの友人であるお菓子の缶を製造する会社を経営している清水さん(とってもフツーの人です)がFacebookやTwitterで、彼の経営する会社の缶がテレビに登場するという記事を書いているのを見て興味を持って、録画していたと言うわけです。
ブリキの缶の誕生、その歴史、変遷から缶の再利用にまつわるエピソードまで、意外と(失礼)興味深い内容でした。
その中でも印象的だったのはボクの友達の清水さん(とってもフツーの人です)がお菓子屋さんに営業で訪れたときのエピソードです。
まるでカメオのブローチのような、とてもエレガントなお菓子の缶をお見せした時のこと。
その缶を見たパティシエさんがあまりの美しさに感銘を受けて、その缶からインスピレーションを得て洋菓子を作った、というようなお話だったのです。
その缶のイメージからできた『生マシュマロ』と言う商品。
とっても人気があるそうです。
缶の美しさから生まれたお菓子
通常は缶というのはあくまで商品を入れる器、パッケージですよね。
商品ありきでパッケージ、缶のデザインを選ぶというのが通常の手順。
でもこの場合はちがいます。
その缶の美しさから商品が開発されたという事例。
これってちょっと画期的なことですよね。
でも、だからこそ『生マシュマロ』とその器である缶が見事なハーモニーを出した商品になって、その缶を手に取りお菓子を口に運ぶ人に感銘を与えた。
結果とっても人気のあるお菓子になった、ということなんでしょうね。
ボクの友達の菓子缶会社の社長の清水さん(とってもフツーの人です)も、良い仕事をしてるんだな〜って感じました。
清水さん(とってもフツーの人です)のブログ→菓子缶メーカー フツー社長 清水雄一郎のブログ
ファッションの世界でもあります
これと同じような例がファッションの世界でもあるんです。
通常商品であるお洋服があって、その世界観を表現するためにお店のインテリア・内装を決めます。
しかし先程の、缶の美しさに感銘を受けて商品が生み出されたように、すでにあるインテリア・内装・建築を生かして商品であるお洋服が生まれたという例です。
青山にあるthe POOL aoyama。
ここは1970年代に建てられたヴィンテージマンションの1階にあります。
その場所は、もともとそのマンションの居住者たちのための室内プールでした。
そのプールの基本的な構造を活かしながらお店を作り、そこに合う商品を作り、そこで販売するというスタイルのお店です。
もともとプールだった、本来水の入っている部分には水の代わりに分厚いアクリルの板を設置して透明の床を作っています。
お客様はまるで水面の上を歩くように売り場を回遊するという仕掛けです。
そして水面のに置かれたテーブルや、周りのプールサイドで商品が展開されています。
基本的な床・壁・天井は、昔使われていたプールそのままの雰囲気を残しています。
商品自体もそのプールによく似合う白やブルーの展開が多く、水泳やテニスといったヴィンテージマンションによく似合いそうなアイテムからアイデアソースをとられたようなモノが展開されているように思えます。
なので圧倒的に商品と器全体、いわばその空気感というものがリアリティーを持って感じられるという仕掛けです。
きっとその空間でのお買い物は、お客様に何倍もの価値観を感じさせてくれることでしょう!
日本のファッションのブランドやお店は、基本的にその商品やブランドに合わせて器を作っていくことがほとんどです。
しかしこれからは、このように元々その地域にある建物や、その地域独特の景観からインスピレーションを得てものを作るといった、従来とは逆の発想のお店やブランドが出てくるんじゃないかな?と思っています。
新しいものを作るために古いものを壊すのではなく、古いものを生かしながら圧倒的な空気感でお買い物を楽しめるお店。
そんなお買い物体験って、きっと素敵なものになるだろうなって思いませんか?
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