体験を提供する店(サンボアの思い出)


昨日は友人の飲食店がテレビの取材を受けました。

で、ボクもその取材に協力。

友人が見事に再現した、ある幻のカレーについての取材でした・・・

取材風景

取材風景

衝撃のカレー

もう40年近く前になるかな?

ボクは中学校に通う為に阪急電車を利用していました。

芦屋川という駅から乗車し、西宮北口という駅で乗り換えて甲東園という駅で下車していました。

学校帰りは西宮北口で下車して時折寄り道したものです。

その頃良く通ったのが「サンボア」というカレー屋さん。

ホントに独特なお店でした。

まず商品であるカレー。

当時、一般的なカレーと言えば、牛肉やジャガイモや人参がごろっと入った茶色いルーがかかったもの。

「サンボア」のカレーは、サラサラで具が入っていない黄色いルー。

シルバーのステンレスのお皿に、熱々のご飯。

それにうっすらと卵らしきものが膜のように巻かれている。

香ばしい香辛料の香りが立ちのぼる先ほどのルーがその上に掛かり、更にその上に薄ーいカツがちょこんと乗っている。

とってもとっても薄ーいカツ。

さらに脇には刻まれたキャベツがこんもり盛りつけられています。

そしてそしてキャベツには白いミルキーなドレッシングがかけられており、そのドレッシングはキャベツだけにとどまらず、黄色いルーの海にまで流れ込んでいるのです。

そう、まるでビーフシチューに掛けられた生クリームのように・・・

一口ルーを口に含む。

そのサラサラのルーは、ひどく辛く感じたものでした。

ただ、先ほどのドレッシングが流れ込んだ部分のルーを口に含むと、少し甘酸っぱさが加わり、ルーの味は深みを増す・・・

そんな、今まで見た事もない、全く異色なカレーでした。

値段は250円。

当時としても破格の安さでした。

独特なお店

またそのお店とお店にいるおばちゃんもとっても異色。

入り口のドアには、短冊の様な形の、ボール紙の切れ端にマジックで「ここは学生の店です」と書かれた札がぶら下がっている。

店内は薄暗く、飲食スペースはカウンターのみ。

カウンターの中にはおばちゃんがいるのですが、なんだか空気はキリッとしていて・・・

学生の店なのに、ガヤガヤうるさい学生はいない(客の大半は高校生)。

食べ始める際は、「いただきます」と言い、食べ終わると「ごちそうさま」と言い、食べ終わった皿は、カウンターの上段に上げておく、そして食べ残しはしない・・・

どの学生もそんな当たり前の事が出来る客ばかり。

カウンターの中の壁には、おそらく客の高校生の修学旅行のお土産であろう富士山のペナントや、アイヌ語の書かれたタペストリーなどが飾られている。

おばちゃんは決して多弁ではないが、言いたい事ははっきり言う。

その教育が徹底しているので、どんな悪そうな学生もお行儀が良い。

だって、ここでおばちゃんに逆らおうもんなら、お待ちかねのカレーが食べられないんだから・・・

これを「食育」と言うんでしょうね(あっ、意味をはき違えてる???)

時折、何かの間違いのように、普通のサラリーマンが入ってくる事もある。

そんなときおばちゃんは、「ウチは学生の店やから」といって追い返す。

やがて「サンボア」も閉店して長い年月が経ちました。

風の噂では、おばちゃんももう亡くなってしまったと・・・

執念の再現

その「サンボア」の味、それを見事に再現した男がいます。

松本勇二さん。

ボクの高校時代からの友人で、「サンボア」の虜になり、何度もお店に通った一人です。

今は、芦屋でGRASS(グラス)という飲食店を経営している。

GRASS H.P

GRASS 食べログ

彼は昔から美味しいものの食べ歩きが好きで、気に入ったメニューを見事に再現して来た。

ボクはそんな彼に、これだけは無理だろうな、と思いつつも何度もサンボアのカレーの再現を提案していました。

そのうち彼の方が夢中になり、持ち前の凝り性を発揮。

ルーの研究、薄ーいカツの研究、薄ーい卵の膜の研究、甘酸っぱいミルキーなドレッシングの研究を繰り返しました。

色んな情報を収集、知っていそうな人には会いに行って教えをこうて、ついに完成させました。

ボクも試作段階から何度も試食させてもらいましたが、ホントに見事な再現ぶりです。

体験を提供する

彼の店では、そのカレーは今時珍しいシルバーのステンレスの皿に盛って提供する。

そして基本的に最初のオーダーとして、客に食べてもらいます。

当時の高校生も、空腹を抱えてサンボアを訪れ、出されたカレーを素早くかき込んだから・・・

照明は「サンボア」と同じく、薄暗い。

はじめてそのカレーをオーダーしたであろうお客には「サンボアの思い出」と書かれたノートを差し出す。

そこには、いにしえの時代に実際にサンボアでこのカレーを食した沢山のカレーファンが綴った思い出が書かれています。

それを読みながらカレーを食べたり、自分がそのノートに思い出や感想を書く事も可能。

そうする事でいつしか、それを食べたお客はあの時代へタイムスリップします。

当時「サンボア」に通った人は、どっぷりとその世界へ。

当時の「サンボア」を知らない人も、その時代に思いを馳せて。

そう彼の店では、あの味を再現させたカレーを売っているのではなく、あの時代へのタイムスリップした感じ、という体験を売っているのです。

当時あのカレーは250円。

今、GRASSでは1000円で提供しています。

しかしそれは当時と同じく破格値です。

あの時代へのスリップ感という、独自の体験を売っているのだから・・・

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藤井 雅範

代表 VMDコンサルタント株式会社ライトハウス
アパレルメーカー 株式会社ワールドにて28年と9ヶ月、一貫してVMDの専門職に従事。レディス、メンズ、雑貨ブランド。セレクト、ファミリー及びスポーツ業態のVMDを経験。複数の事業部にてVMDマネージャーを歴任。エクスペリエンス・マーケティング実践塾55期生。《藤井雅範のプロフィール》

Comment

  1. 中屋麻美子 より:

    今日わ。20代の頃、結婚前に主人に連れられて、サンボアに行きました。主人は常連で顔も名前も覚えてもらってたので、店に入れてもらい、オムライスにカレーのルウがかかったのを食べました。レタスが苦手で残すと、おばちゃんに叱られました。恐かったけど、あの味に魅せられ何回か通いました。主人とサンボアのカレー食べたいけど、無理やね懐かしいと話してたら、glassと云う店で再現と知り、二人で行こうと思います✨

  2. […] 先日、友人から 「僕のブログにサンボアの娘さんから書き込みあったよ!」と連絡がきた。 […]

  3. ハレルヤ より:

    初めまして西宮北口にあった「サンボア」の娘です。偶然にこちらのサイトを見てびっくりしました。こんなに心にとめて頂き、亡き両親もきっと喜んでいると思います ありがとうございました。感謝です。

    • 藤井 雅範 より:

      ハレルヤさん、コメントありがとうございます!
      あの「サンボア」のお嬢さんなんですね!
      「サンボア」には特別な思いがあります。
      そしてそんな人はとっても沢山いると思います。
      おばちゃんとおじちゃんの思いのこもった、あのお店での体験は今でも沢山の人の心に印象深く残っているのだと・・・
      よかったら一度「グラス」にある、「サンボアの思い出」というノートを読んでみてください。
      みんなにとっても愛されていたお店だった、という事がうかがえると思いますよ。

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