村上春樹は日本語ポップだ!|文学とイラスト

日本語ロック

その昔、『日本語ロック論争』という言葉が賑わっていた時代ありました。

ロックは英語で歌わなきゃ、ノリが良くない!そんな風潮があった1970年頃のお話。

細野晴臣さんや、大瀧詠一さんがいた“はっぴいえんど”というバンドが、あえて日本語で歌うということに挑みました。

“風街ろまん“”というアルバムで成功を収め、「日本語でもロックできるじゃん!」という認識が広まっていったそうです・・・

 

『村上春樹とイラストレーター』

先日、東京は練馬区下石神井にある、ちひろ美術館へ行きました。

『村上春樹とイラストレーター』という展示を観に行くためです。

住宅街の一角にある、ほんの小さな美術館。

聞けば、元々絵本作家のいわさきちひろさんが自宅兼アトリエとして使っていた土地を美術館にしたそうです。

当時をを再現した中庭やリビングもあります。

まるで遠縁の親戚の家を訪ねた時のような、ホワっとした落ち着きを感じさせる空間です。

 

佐々木マキ、安西水丸、和田誠、大橋歩といった、村上春樹の作品に彩りを添えたイラストレーターたちの作品が一堂に会していました。

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中でも印象的だったのは佐々木マキさんの作品たち。

村上春樹の作品では初期三部作をはじめ、“カンガルー日和”といった短編集や“羊男のクリスマス”といった絵本までを手がけたイラストレーターさんです。

 

日本語ポップ!?

村上春樹の文章は、日本語で書いてあるのに英語のようなポップな感じを覚えます。

コレには彼特有の“ハズシ”や、“はぐらかし”、“斜に構えた受け流し”の情緒がそう感じさせてくれるような気がするんです。

また、“死”に対して大げさではなかったり、登場人物がまじめに?死なないという点もポップな印象を加えるのに一役買っていたりする。

 

例えばこんな文章。

「家族の悪口なんて確かにあまり良いもんじゃないわね。気が滅入るわ。」「気にすることはないさ。誰だって何かを抱えてるんだよ。」「あなたもそう?」「うん。いつもシェービング・クリームの缶を抱きしめて泣くんだ。」

「うん。いつもシェービング・クリームの缶を抱きしめて泣くんだ。」・・・

ポップだと思いませんか?(笑)

 

イラストがあることで本を所有する愉しみが増す

そしてそんなポップな表現に一役買っているのが佐々木マキさんによるイラストです。

ただでさえ無国籍な文章の作品たちを、より一層ポップな世界へとヴィジュアルでも導いてくれるイラストたち。

 

小説って言うと、中の文章・ストーリーだけが商品、って思ってしまいがちですね。

でもイラストがあることで、よりそのイメージは膨らんできます。

更それに装幀が加わることで、文章・ストーリーだけではなく、“本”としての存在感が出てきます。

たとえ中身を読まなくても、所有したり本棚に並べたり飾ったりする喜びも出てくるようにね!

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ところで、佐々木マキさんってどのような方かご存じですか?

「きっと海外のカルチャーに造詣の深い女の人なんだろうな?」そんな風に思っていました。

名前も聞いてもイラストを見ても・・・

先日、同じハルキストとして仲良くさせていただいている編集者の酒井圭子さんとお話して思い出したことがあります。

実は、男性だったんですね!

すっかり忘れていました・・・

 

ちひろ美術館の『村上春樹とイラストレーター』展は8月7日までの開催予定です。

 

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