あの夜、芦屋のバーで・・・

公開日: 阪神間カルチャー


ボクが幼いころにはスパゲティは二種類しかなかった。

正確に言うと、当時のボクのまわりでは二種類のスパゲティしか目にすることはなかった、ということ。

その二種類とはナポリタンとミートソースである。

 

ナポリタンと呼ばれているのはいわゆるケチャップ・スパゲティのこと。

ここ数年人気が再燃しているので再び食べられるお店が増えてきた。

でも本格的なイタリア料理のお店で、それが提供されることは滅多に、いや絶対ない。

 

ミートソースは缶詰で売られていた。

缶詰のミートソースをゆでたスパゲティにぶっかけるだけ。

子供にでも出来る料理。

テキトーに粉チーズをふりかけて食べる。

パルメザンチーズじゃないよ、粉チーズ(笑)

雪印製で、オレンジ色の小さな丸い缶に入った粉チーズ。

最上面を回転させて、本体と最上面の開口部が合致すると穴が開く仕組み。

粉チーズが引っかかって回転しづらかったなぁ。

 

当時はデュラムセモリナ(デュラムという品種の小麦をセモリナという手法の荒挽きで粉にして仕上げたパスタ)なんて言葉も知らないし、そんなパスタはフツーには売ってなかった。

アルデンテ(程よい固茹で)なんて概念もなかったしね。

うどんみたいに茹でて、ケチャップで炒めるかミートソースをぶっかけたものが一般的なスパゲティと呼ばれるものだった。

 

今ではどんなお店でも、とても美味しいスパゲティが出される。

デュラムセモリナを使った麺をアルデンテで提供するなんてアタリマエ!

そう言えば、こんなことがあったなぁ。

あの夜、芦屋のバーで

ある日ボクが仕事帰りに、阪急芦屋川のほとりにあるバーに立ち寄ったときのこと。

そこは古くからの友達が、一人でやっているシンプルなバー。

メニューも、ドリンク以外にはピーナッツとピスタチオくらいしかなかった。

いつものようにドアを開けてカウンターに座ってビールを呑みながら友だちと話している時、ボクが何気なく『腹減ったなぁ』とつぶやいたら、友達はカードを差し出してこういった。

『あるよ・・・』

 

それは新しいメニューカード。

そこには結構めんどくさそうな(イタリアンな)名前のスパゲティが並んでいる。

『えっ、こんなのできるの?』

そう言うと

『出来るよ・・・』

そういえば彼は料理もできるはず。

腕のほどは不確かだが。

 

『じゃ、この海老のトマトクリームのスパゲティを』

ボクがそうオーダーすると、彼は裏の厨房に消えていった。

たった一人でやっているバーなので、調理中にお客さんが来たら大変だろうな?なんだか手が込んでいそうな料理だし・・・そう思っていると1,2分で彼はカウンターに戻ってきた。

そして5分ほどしてまた厨房に入り、今度は料理を盛った皿を手にしてカウンターに戻ってきた。

『どうぞ・・・』

見事な“海老のトマトクリームのスパゲティ”が盛り付けられている。

『うわっ、うまそー!』

 

さっそく海老のトマトクリームのスパゲティをいただいた。

ヂュラムセモリナのアルデンテ。程よい歯応え!

なめらかなトマトクリームソースにぷりっとしたエビ!

思わず白ワインを注文した。

雰囲気のあるバーで、美味しいスパゲティによく冷えた白ワイン。

ちょっとしあわせ・・・

 

『腕上げたなぁ。しかし、いつからこんなに旨い料理が作れるようになったんや?』

『コレだよ・・・』

彼が手にしたのはニチレイの袋だった。

Ben_Kerckx / Pixabay

技術の進歩は素晴らしい。

そして、出来ることなら騙し通してほしかった。

そう思った夜。

 

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藤井 雅範

代表 VMDコンサルタント株式会社ライトハウス
アパレルメーカー 株式会社ワールドにて28年と9ヶ月、一貫してVMDの専門職に従事。レディス、メンズ、雑貨ブランド。セレクト、ファミリー及びスポーツ業態のVMDを経験。複数の事業部にてVMDマネージャーを歴任。エクスペリエンス・マーケティング実践塾55期生。《藤井雅範のプロフィール》

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